第7話 薬剤師と健康の関係が、今、注目されているそうですね?

アンズの、アクティブOFFタイム

――着いた!
アンズさん一家が出場するウォーキング大会のある町。

わたしも混じってアンズさんを応援していようっと。
もうすぐ聞いていた時刻だけど、本当にアンズさんが来るのかなぁ

カオリさーん

……もう来た。しかも、かなりいい位置?
アンズさぁーん、がんばってくださーい

カオリさーん
日本人の多くを悩ませる生活習慣病リスク。
予防対策としては、日ごろから食事や運動といった生活習慣の乱れに気をつけることが重要なのよー

歩きながらしゃべってる

次に重要な対策として、健康診断を受けることによって早期発見をめざすことが挙げられるのー

アンズさん速い……!
健診でもしも生活習慣病が見つかったら、お医者さんで早く治療を、ということね

薬局機能の多角化と薬剤師

常にああして運動していれば、体も丈夫でいられるんでしょうね。
“スーパーウーマン薬剤師”の美と健康の秘けつ、少しわかった気がします。

休日に体を動かすことは、よいストレス発散にもなるわ。
さらに運動を通じて、仕事以外の人間関係が広がるという利点もある

身近な人たちとのつながり、大事にしたいですね

ほほほ、これを見ていただけるかしら?
ウォーキング大会参加の写真をSNSにアップしたら、こんなに「いいね」が付いちゃった

……スポーツウェア姿もばっちり……

何も本格的に運動を始めなくても、日常の運動量を少しずつ増やすことで、運動不足の解消をすることもできるのよ

でも、運動習慣を付けると言っても、いったいどうすれば?

手軽に始められるところでは、日常の中で歩数の増加をめざす、といったことが挙げられる。

わたしでも、歩く量を増やすだけなら、始められる……かな?

平成25年度開始の「健康日本21(第二次)」では、①日常生活における歩数の増加、②運動習慣者の割合の増加が掲げられているわ。
このうち①では20歳から64歳までの男女で、一日に歩く量を男9,000歩、女8,500歩に増やすことが平成34年度までの目標とされている

うぅん、わりとまとまった歩数。わたしも朝晩にウォーキングでもしないと無理かも

運動不足にはさまざまな弊害があることはよく知られているわね
生活習慣病のほか、生活習慣病リスクを高めるメタボリック・シンドローム……

“メタボ”ということば、そういえば、あちこちでよく聞きます

メタボリック・シンドロームとは、内臓に脂肪が蓄積され、血糖値・血圧・中性脂肪などが正常値より高めになる状態をさし、メタボになると動脈硬化を起こしやすくなるとされる。

食生活が豊かな現代の日本では、メタボはだれにでも他人事ではない悩み

メタボかどうかの判定にはウェスト囲がめやすになるといわれている
生活習慣病予防のために、国は平成20年度からメタボの兆候を早期発見し、生活習慣を改善するサポートを行うための「特定健診」・「特定保健指導」の取り組みを始めているのよ

健診段階や保健指導段階で健康上の問題に気づくことができれば、メタボになったり、生活習慣指導を受けたりする状況を回避することができますもんね

適切な運動習慣によって防げる健康リスクはほかにもあるわ
たとえば、“ロコモ”ということばを聞いたことはあって?

どこかで耳にしたことはあるような……

ロコモーティブ・シンドローム、略してロコモ。運動器の動作に支障をきたしたために、移動機能の低下が起こった状態を言う。
ロコモになると生活に介護が必要になり、一人きりでは出かけることさえ難しくなってしまう

齢をとるとだんだん活発に動けなくなってくるのは当然のこと。ですが、できればロコモを防ぎ、高齢になっても自力で外出できればいいですよね


ね? だから、メタボやロコモを防いで元気な体を保つために、日ごろから運動習慣を意識して付けておくことが重要になるというわけ

健康維持のプラットフォームとしての薬局

生活習慣病予防に適度な運動の習慣づけ。自分の体を長く健やかに保つためにかかせない対策ですね

あら、患者の健康を守る薬剤師としても、生活習慣病予防や健康づくりに関心を持つのは重要なことよ

でも、患者さんが薬の服用を開始するのは、たいてい病気にかかった後じゃないですか。
まだ薬を必要としていない段階の患者さんに、薬剤師がかかわることが、やはり重要だと言えるんでしょうか?

ええ、とても重要。年々進む薬局機能の多角化の中で、いまや薬局には、病気治療が始まってからの調剤業務だけでなく、日常生活における健康の維持増進のプラットフォームとしての役割まで期待されるようになってきている

従来のように、処方せんどおりに薬を出すだけが薬局の役割とは限らないっていうことですかぁ。転職成功のためにも、ぜひ押さえておきたいポイントです!

もちろん、日常の調剤業務において、適切な服薬指導を行うに当たっても、生活習慣病予防などの知識を備えておくことは必要なはず。カオリさん、医療用医薬品国内売上高の上位に入る品目は、多くが生活習慣病の治療薬だということはご存知かしら?

生活習慣病は日本人の多くが悩む病気だけあって、薬局に来る患者さんの中にも治療薬を服用中の人がたくさんいるというわけですね

つまり、生活習慣病の治療薬は、調剤・服薬指導・疑義照会の場面がいずれも多いということ。調剤業務をより正確にこなすためには、薬剤師自身が、生活習慣病への理解を深め、生活習慣病患者の状態について正しく知っておく努力が求められる

なるほどぉ、でも、患者の状態を知るのは、薬剤師の努力だけじゃなく、患者の診察に当たる医師の協力が必要なことでは?

確かに。近年再び“医薬連携”を強める動きが、医薬界の一部で起こっている背景には、薬剤師による“健康”へのより積極的な関与に対する期待の高まりもあるのでしょう

わたしは今まで……、医療施設は医療施設、調剤薬局は調剤薬局と完全にお互いが独立して業務を行うのが、いちばん望ましい形だと思っていました

カオリさんが今言ったような、かつてのゴールは、すでに現在の医薬界の理想形とは限らなくなってきていると言ってよいでしょう。“医薬連携”体制を補う具体的な動きの一例としては、処方せんへの臨床検査値記載による、医師・薬剤師間での患者情報共有の取り組みが、一部の大学病院などで始まっているわ

検査値のデータを元に正しく患者の状態を把握することで、薬剤師がさらに的確に疑義照会などを行えれば、調剤業務の安全性をいっそう向上させることができそうです

この動きが広がれば、エビデンス・ベースの服薬指導の精度をさらに上げるための有効な手段になるでしょう。
ただし、検査値データの利用を適切に行うためには、薬剤師側に検査値の知識が要求される。
また一方で、さっき出た“薬局機能の多角化”という点に話を戻すと、患者の健康管理と病気治療に薬局が一体的にかかわっていくためにも、薬剤師にとって生活習慣病予防に関する知識の必要性は増していると言えるの

薬剤師だから関係ないという顔はしていられない時代、ってことですね

薬剤師の健康に対する関与の期待が高まっている状況の例として、2016年4月からスタートした、二つの取り組みが挙げられるわ。
「かかりつけ薬剤師・薬局」と「健康サポート薬局」。

へぇー、いったいどんなものなんでしょう?

ここからは、いつものように『アンズ調査ファイル』を見ながら、この二つについて、どういうものか紹介していくわね

かかりつけ薬剤師”がもたらす変化

まず、一つめの「かかりつけ薬剤師」とは、どういったものですか?

「かかりつけ薬剤師」の取り組みは、調剤報酬改定により、2016年4月から「かかりつけ薬剤師指導料」が新設されたことから正式にスタートしたの。
かかりつけ薬剤師の主な役目は、担当患者の服用するすべての処方薬や市販薬などの情報を把握し、危険な飲み合わせや過剰投与、重複投与などがないかを継続的にチェックすること

どの薬剤師が、どの患者のかかりつけになるかは、どのようにして決めるんですか?

かかりつけ薬剤師になることのできる条件を満たした薬剤師の中から、患者が指名することによって決めるのよ。かかりつけ薬剤師を決めた患者は、次から医療機関を受診する際などに、自分にはかかりつけ薬剤師がいるということを伝えて、処方せんを受け取るの

指名後は、どこの医療機関で診察を受けても、かかりつけ薬剤師のいる薬局に処方せんを持ちこんで調剤してもらうことになるわけですね

かかりつけ薬剤師を持つことにより、基本的に同じ薬剤師が患者を担当することになり、薬歴の一元管理がより行いやすくなるので、安全性が高まると言えるわ

いつも決まった薬局に通うことになって、患者さんも安心感が増すと思います

また、かかりつけ薬剤師の役目には、患者からの服薬についての相談に24時間対応するという業務が含まれるため、患者は薬局の開局時間外の連絡先を聞いておくことで、夜間や休日にサポートを受けることが可能になる

患者本人が医療機関や薬局に来られない時間でも、自宅からかかりつけ薬剤師に相談に乗ってもらうことができる……いつ薬のトラブルが起こっても即対応してもらえるようになるんですか、便利ぃー!

かかりつけ薬剤師の取り組みが、従来の“門前薬局分業”のデメリットを解消する切り札になる可能性はおおいにあると言えるわ。
従来は、診察をどこで受けたかによって違う薬剤師が調剤を行うため、同じ薬剤師への継続的な相談がしにくく、さらに「お薬手帳」をどこの薬局でも必ず提示していないと薬歴の一元管理ができない、という状況があった

と、こ、ろ、で……、わたしでもかかりつけ薬剤師になることはできますか?

今から挙げる条件をすべて満たせば、カオリさんもかかりつけ薬剤師として指名を受けられるようになるわよ。では、かかりつけ薬剤師になるための条件を挙げるわね

じょ、条件!?
よく聞いておこうっと……

かかりつけ薬剤師・薬局が、この先、患者さんにとって当たり前のものになっていけば、薬剤師の存在感が地域でいっそう増していくことになるんでしょうね

すでにかかりつけ薬剤師という存在の浸透が始まっていることを示すデータもあるわ。
2016年の診療行為別統計では、かかりつけ薬剤師指導料の新設を反映し、薬学管理料が前年から二桁増と大きく数字を伸ばしているの。
前年比で落ち込んでいる調剤技術料とは対照的な結果で、かかりつけ薬剤師という新たな取り組みの利用が、患者の間へすでに広まりつつあることが窺えると言えるわ

〈参考資料〉出典:厚生労働省「平成28年社会医療診療行為別統計の概況」

健サポ薬局”をキャリアアップに活用

薬剤師と薬局が、患者の健康管理への関与を増やすために、2016年4月から始められた二つの取り組み。
「かかりつけ薬剤師・薬局」については、すでに説明を受けましたが、もう一つの「健康サポート薬局」とはどのような取組なのですか?

一定基準を満たした薬剤師が、所定の研修を修了すると、勤務する薬局に「健康サポート薬局」であることを示す表示を掲出することを許可されます。
「健康サポート薬局」では、通常の調剤と服薬指導に加え、市販薬および健康食品を安全に正しく使用するためのアドバイスや、健康維持と増進のための相談受付、また必要に応じて他の医療機関への紹介などのサポートを行います

基準を満たした薬剤師だけが、研修を受けられるのですね

薬局での実務経験が5年以上あり、すでに「健康サポート薬局」になっている薬局か、これからなろうとしている薬局に勤務している薬剤師であることが基本的な条件になるわ

研修とはどういったものですか?

では、研修項目についてお話しするわね。
メモを取るなら、ご準備は今のうちに!

あわわー、はいっ

二つの研修を修了すると、有効期限6年間の研修修了証が発行される。さらに6年という有効期限は、所定の研修項目の再履修により、延長することができる。
研修修了証の発行を受けた薬剤師の常駐する薬局が、新規に、あるいは継続して「健康サポート薬局」の表示を出すことができる……というのが、「健康サポート薬局」の取り組みのあらましよ。
おわかりいただけたかしら?

処方薬に関係する相談だけでなく、市販薬や健康食品に関する相談にまで乗ってもらえる――というのは、患者さんにとって安心なことだと思います

薬の安全という点からいえば、飲み合わせや副作用による健康被害を、より防ぎやすくなるという効果もあるでしょう。
のみならず、従来の服薬指導の枠組みにとどまらない、食事習慣や運動習慣まで視野に入れたきめ細かなアドバイスを行うことができるようになるという利点もある

「かかりつけ薬剤師・薬局」に「健康サポート薬局」――薬剤師の担う役割はますます増えてきているんですねぇ

薬局機能の多角化には、時代の変化に合わせた社会の新たな要請といった背景もあるの。
たとえば、高齢化対策への要請は、外出の難しい高齢者のための24時間相談体制や在宅調剤に対応した体制の拡充といった状況をもたらしている。
地域包括ケアシステムの一部として、薬局が社会のニーズに新たな機能で応える必要が生じた結果、「かかりつけ薬剤師・薬局」「健康サポート薬局」といった取り組みが開始されたという側面もある。
こうしたながれまで理解しておくと、よりしっかりと二つの取り組みの意義を把握することができるはずだわ

高齢化の状況にとって、薬局機能の多角化が、今後効果的な対策になっていくといいんですけど

とくに「健康サポート薬局」では、届出を出している薬局で働くにあたり、新たに研修を受ける必要が出てくる薬剤師もいるでしょう。
転職を考えている薬剤師は、希望する勤務地の研修体制について、あらかじめ調べておくといいと思うわ

わたしは実務経験がまだ5年未満なので、すぐには研修を受けることにならないと思いますが……

とはいえ、“健康”の分野で薬剤師の果たす役割への期待が増大している、という状況はどの薬剤師にとっても無関係なものではない。
患者の服薬指導についてだけでなく、健康維持や増進について薬剤師ができることを考え、自分なりの意見をまとめておくことも、きっと転職活動に役立つと思うわよ

面接で質問されたときの準備にもなりそうですね

健康サポートに関係のある実績ありの薬剤師なら、面接時にアピールできるよう、実績に関してもまとめておくといいでしょう

カオリのおどろきOFFタイム

あっ、手に持った写真は……
この前のウォーキング大会の写真、プリントしたんですか!?

思い出の一ページとして、家族のアルバムに残しておこうと思って

すっごく分厚いアルバム……少し見せてもらってもいいですか?

いいわよ。
これは主人と息子たちがサーフィン大会に出場したときの写真、こっちは家族旅行先でボルダリングに挑戦したときの写真……

アンズさん一家は、みんな笑顔が輝く仲よし一家なんですね。
スーパーウーマン薬剤師アンズさんは、プライベートもばっちり充実!!

うふふ、なーんて言われると少し照れちゃう。
主人の好みに合わせるうちに、一家そろってすっかり運動好きにされてしまったわ

薬剤師が元気なことが……患者さんの元気にもつながっていく……
アンズさんを見ていると、わたしそんな気がします

ところで、カオリさんはなにかスポーツなどはなさるのかしら?

薬局の仕事がないとき、たまーに……

へーぇ、バレーボールかしら、それとも卓球?

すごい速度で急な角度を下ったり、同じところをぐるぐる回ったり

意外に激しい動きなのね、まさかクロスカントリーとか?

わたしはおもにローラーコースターやティーカップですね

んんん?聞いたこともない競技。
だけど、これも自転車競技の一種なのかしら……
――ってカオリさん!それって自分の体で運動してるんじゃなくて、遊園地の動く乗り物に乗ってるだけじゃないの!!

あは、あはは……
遊園地めぐりは、スポーツのうちに入りません……?



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